登記の際の通称名の使用 [不動産登記]
外国籍の方が日本において通称名を使用することがあります。
登記の際、本国名での登記はもちろん可能ですが、外国人住民票等に通称名が記載されている場合、その通称名で登記することも古い先例で認められています。
一般に、通称名を使用している方は、日本において通称名のみを使用する前提の筈ですので、登記の際には注意が必要で、どちらの名前で登記をするかの確認は欠かせません。
ところで、先般、通称名での登記を希望された方の所有権移転登記と抵当権設定登記を行いました。このため、もちろん通称名で登記をしたところ、抵当権を設定した金融機関から、本国名で登記をしないのはどうしてかとの問い合わせがありました。
上述しましたとおり、通称名を使用する方は、日本国内においては通称名のみを用いて生活することを希望しているものと考えられ、かつ、本人が通称名の使用を希望し、さらに、通称名での登記も認められていますので、当然に通称名で登記をした訳ですが、この金融機関の担当者は、抵当権設定の表記については金融機関の意向が優先されると主張していました。
驚くべき考えです。金を貸すのだから、何でもいうことを聞けという発想です。金融機関はこのような発想をする人が多いように思います。
通称名を使用しての生活を希望しているのに、お金を借りて抵当権を設定してしまったばかりに、本国名の使用を金融機関に強要され、債務者欄の登記によって日本国籍を有しないことを社会に暴露された、などということがあったならば大変な問題です。
通称名での登記が違法であるならばともかく、登記実務上は認められているのですから、抵当権の登記においても、やはり債務者の人格権を尊重し、債務者の意向で選択すべきです(違法でないのですから、金融機関の意向を考慮する必要はないと思います)。
今般、会社の社長が通称名を使用している従業員に対し、本国名の使用を強要した案件で、静岡地裁が社長に対する損害賠償を認める判決をしたたようです。
金融機関のあの担当者には、静岡地裁のこのニュースを見て何と思うでしょうか。何も感じない、気づかないのかも知れません。
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ゆうちょ銀行に会社の出資金を払い込む [会社登記]
会社設立時の出資金をゆうちょ銀行に払い込むことは可能か否か、いつも心配になるので、備忘録を兼ねて整理します。
会社法第34条第2項では、出資金の払い込みは発起人が決めた銀行や信託会社にするとしています。銀行については、同条により、銀行法第2条第1項に規定した銀行とされていますので、会社法にいう銀行は、銀行法第4条第1項の内閣総理大臣の免許を受けた銀行ということです。
ところで、ゆうちょ銀行は、郵政民営化法第98条第1項により、銀行法第4条1項の内閣総理大臣の免許を受けたものとみなすとされていますので、会社法のいう銀行ということになります。
このため、ゆうちょ銀行に出資金を払い込めば、会社の設立は可能ということです。
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一時取締役登記の抹消 [会社登記]
一人取締役の株式会社の場合、その取締役が死亡した場合、株主総会を招集する人がいなくなってしまいます。
株主が全員出席して株主総会を開催できれば良いのですが、これができない場合、一時取締役を裁判所に選任してもらうほかありません。
一時取締役は、取締役と同様の権限がありますので、株主総会を招集することができます。
一時取締役及び一時代表取締役選任の登記は、裁判所書記官の嘱託でなされますが、抹消の登記はどうするのか、よく分かりませんでした。
色々調べていましたら、商業登記規則第68条第1項に規定がありました。後任者の就任登記をする際に、登記官が抹消の記録をするとのことです。いわゆる職権抹消です。
従いまして、従前の取締役及び代表取締役の死亡の登記、選任した取締役及び代表取締役の就任の登記をするだけで良いということです。実際、これで問題なく登記は完了しました。
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