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遺産分割調停と相続分譲渡 [不動産登記]

被相続人Aに相続が開始した後、さらにその相続人B及びCにそれぞれ相続が開始し、Bの相続人が甲及び乙、Cの相続人が丙及び丁である場合において、丙及び丁がその相続分を甲に譲渡し、甲及び乙の遺産分割協議で甲が不動産を取得することになった際の登記申請方法はどうなるかです。

単純に、〇年〇月〇日B相続、〇年〇月〇日相続を原因として、被相続人Aから甲への相続による所有権移転登記ができれば簡便です。

ところが、平成4年3月18日民三第1404号民事局第三課長回答によるならば、
1 AからB及びCへの相続による所有権移転登記
2 Bから甲及び乙への相続による持分全部移転登記
3 Cから丙及び丁への相続による持分全部移転登記
4 甲及び丙・丁の共同申請により相続分の贈与(又は売買)による持分全部移転登記
5 甲及び乙の共同申請により遺産分割による持分全部移転登記
を申請する必要がありそうです。

上記のような単純な事例でしたら何とかなりそうですが、相続が3回も4回も発生し、相続関係者が100人近くとなるようなケースにおいて、上記のような手順を採るとなれば、もう相続登記をあきらめざるを得なくなります。

それでは、これを遺産分割調停の手続きの中で行った場合はどうでしょうか。

調停調書に
〇被相続人の各相続人を確認する条項がある。
〇各相続人の再転相続人(広義の意味)を確認する条項がある。
〇再転相続人が相続分の譲渡をしたことを確認する条項がある。
〇相続分譲渡者が相続分譲渡により手続きから排除(家事事件手続法第43条)されたことを確認する条項がある。
〇遺産取得者を確認する条項がある。
場合、調停条項上では、いったんは相続関係者全員が遺産分割調停に参加したうえ、それぞれ相続分譲渡(脱退申出)をして手続きから排除されているので、実質的には遺産分割協議の中で遺産を取得しないと意思表示をしたものと考えられ、よって相続による所有権移転登記(上記の例では、〇年〇月〇日B相続、〇年〇月〇日相続を原因とするAから甲への所有権移転登記)をすることができると考えました。

色々と意見を添えて登記所に照会をかけましたところ、照会のケースでは数次相続の中間省略登記が可能でしたので、被相続人から最終相続人に相続による所有権移転登記を申請が可能となり、その登記も完了しました。

相続登記未了の案件で相続人の数が膨大になった場合、ある程度は便宜的な登記手法を容認してもらえないと、相続分譲渡などの手法を駆使し、さんざん努力し合意しても、結局、その登記ができないということになってしまいます。

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2023-12-01 11:00  nice!(0) 
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始期付所有権移転仮登記の受贈者の死亡 [不動産登記]

始期付所有権移転仮登記がなされているところ、死因贈与契約の受贈者が贈与者より先に死亡した場合の登記手続きにつき悩みました。

死因贈与契約に民法第994条第1項が準用されれば死因贈与契約は失効しますし、準用されなければ死因贈与契約は失効しません(受贈者の相続人が地位を承継)。

東京高裁の平成15年判決では準用を肯定し、京都地裁の平成20年判決と水戸地裁の平成27年判決は準用を否定しています。最高裁の判例はありません。

そうしますと、登記手続きの場面においては、どちらの考え方も否定されない筈ですので、当事者の意思がどうであったかと探りました。
残念ながら亡くなった受贈者の意思は不明ですが、その後に亡くなった贈与者の遺言の中に、死因贈与契約は失効している旨の記載がありましたので、民法第994条第1項の準用肯定説で登記手続きを準備しました。

問題は、始期付所有権移転仮登記を抹消する登記申請です。
今回は、受贈者の死亡日付権利失効を登記原因とし、登記原因証明情報は受贈者の死亡と贈与者が当時生存していたことを証する戸籍(除籍)謄本としました。

もちろん事前照会をかけて申請しましたが、この登記は無事に完了しました。

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2023-09-25 18:00  nice!(0) 
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社会福祉法人の抵当権設定登記 [不動産登記]

社会福祉法人が債務者兼抵当権設定者として抵当権設定登記を申請する場合、通常と異なる書類の提供が必要になりそうな気がします。

社会福祉法人が所有する財産を担保に供する際、厚労省が定めるモデル定款に準拠した定款の規定に従い、所管庁の承認が必要となります(根抵当権は承認されないようです)。
このため、抵当権設定登記を申請する場合において、この所管庁の承認書の提供が必要になるのではないかという点が疑問となります。

この類似例として、宗教法人が所有する不動産の処分による所有権移転登記の申請の際、当該宗教法人の包括団体たる宗教法人の代表役員の承諾が必要であったとしても、その承諾書は不動産登記法第35条第1項第4号(不動産登記令第7条第1項第5号ハ)の書面に該当しないという先例(昭和39年8月7日民甲第2732号民事局長回答)があります。

この先例を踏まえますと、社会福祉法人の上記所管庁の承認書も同様に不動産登記令第7条第1項第5号ハの書面には該当しないと考えられます(実際、不要でした)。

契約そのものに承認・承諾が必要ということではなく、契約するにあたって内部的にクリアにする条件ということなのでしょうか。

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2022-07-14 18:00  nice!(0) 
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会社合併時の1株に満たない端数処理 [会社登記]

会社の合併登記で合併消滅会社の株主に合併存続会社の株式を割当てる案件がありました。
計画の初期から関与する場合には株式分割をするなどして端数が生じないようにすることがありますが、そうでない場合には端数処理が必要になることがあります。
端数処理につきましては、会社法第234条に規定があります。

今回登記申請をした案件は次のようなイメージです。
合併消滅会社の株主は、Aが80株、Bが40株、Cが30株であり、合併消滅会社の株式1株に対して合併存続会社の株式が5.83株割当てられます。
そうしますと、
Aには、80株×5.83=466株(端数0.4株)
Bには、40株×5.83=233株(端数0.2株)
Cには、30株×5.83=174株(端数0.9株)
の計算となり、合併消滅会社の株主には、合計873株が割当てられます。

この場合において、合併存続会社は、株式を873株発行することになるのか、端数1.5株があるので、874株を発行することになるのかが問題になります。
今回、合併契約書で874株を発行すると記載して登記申請をしましたところ、登記所から連絡があり873株ではないのかと疑問を呈されました。

株式の端数処理は会社法第234条の規定に従いますので、合併存続会社は874株を発行し、合併消滅会社の株主に873株を割当てたうえ、端数の1.5株のうちの1株(端数を合計した後の1株未満は切り捨て)は競売や裁判所の許可による売却(市場価格ない場合)をすることになりますので、874株を発行しなければ競売や売却等をする(その後は端数に応じて代金を交付する)株式が存在しないことになってしまいます。

いずれにしましても登記所からの電話はかなり焦ります。

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2022-03-08 18:00  nice!(0) 
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抵当権の債務者の相続登記 [不動産登記]

民法改正があり債務引受に関する登記実務にも少し変化があります。
最近、抵当権の債務者の相続登記の依頼が重なり、債権者が遺産分割協議による債務相続を承認する形での登記と債務引受契約による形での登記の双方を経験しました。
登記原因証明情報の作成から依頼されましたので、少し文言を検討して次のとおり準備しました。

遺産分割協議の結果を承認する形・・・
登記の原因となる事実または法律行為
(1)令和〇年〇月〇日、本件不動産に設定登記済みの平成〇年〇月〇日〇〇地方法務局〇〇出張所受付第〇〇〇〇〇号の抵当権(以下「本件抵当権」という)の被担保債権の債務者〇〇〇〇は死亡した。
(2)債務者である被相続人〇〇〇〇の相続人は、次のとおりである。
   〇〇市〇〇区〇〇一丁目〇番地〇 甲
   〇〇市〇〇区〇〇一丁目〇番地〇 乙
(3)令和〇年〇月〇日、上記の相続人は、本件抵当権の被担保債務を甲が相続する旨の遺産分割協議を成立させた。
(4)令和〇年〇月〇日、債権者株式会社〇〇銀行は、上記の遺産分割協議の内容を承諾した。また、前記同日、抵当権設定者たる登記義務者もこれを承諾した。
(5)よって、本件抵当権の債務者は、被相続人〇〇〇〇の相続開始日である令和〇年〇月〇日に甲に変更された。

債務引受契約をする形・・・
1 債務者相続
(1)保険不動産に設定登記済みの抵当権(平成〇年〇月〇日〇〇地方法務局〇〇出張所受付第〇〇〇〇〇号登記済、以下「本件抵当権」という)の被担保債権である平成〇年〇月〇日付金銭消費貸借契約に基づく債務の債務者〇〇〇〇は、令和〇年〇月〇日に死亡した。
(2)債務者〇〇〇〇の相続人は、次のとおりである。
   〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号 甲
   〇〇市〇〇町〇丁目〇番〇号 乙
(3)よって、本件抵当権の債務者は、債務者〇〇〇〇の相続開始日である令和〇年〇月〇日、上記の甲及び乙に変更された。

2 債務引受
(1)本件不動産に設定登記済みの抵当権(平成〇年〇月〇日〇〇地方法務局〇〇出張所受付第〇〇〇〇〇号登記済、以下「本件抵当権」という)の被担保債権である平成〇年〇月〇日付金銭消費貸借契約に基づく債務につき、債権者株式会社〇〇銀行、債務者兼債務引受人甲、債務者乙は、令和〇年〇月〇日、乙の株式会社〇〇銀行に対する債務について、甲がこれを免責的に引き受ける旨の免責的債務引受契約を締結した。
(2)上記(1)の約定において、債権者株式会社〇〇銀行は、債務引受人甲に対し、本件抵当権を甲が引き受けた債務に移す旨の意思表示をするとともに、債務引受人兼抵当権設定者甲は、本件抵当権の債務者が甲に変更されることに合意した。
(3)よって、前記同日、本件抵当権の債務者は甲に変更された。

少しくどい点もありますが、一応登記は通りました。

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2022-03-06 18:00  nice!(0) 
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登記識別情報の不通知と委任状への記載 [不動産登記]

登記識別情報の通知を希望しない場合、登記申請代理人が勝手に不通知希望という意思表示はできませんので、登記申請委任状にその旨を記載する必要があります。登記識別情報の通知を受ける場合も、同じく登記申請委任状にその旨の記載が必要となります。

ところで、抵当権抹消登記の前提として抵当権移転登記をする場合、登記識別情報の通知を受けても意味がありませんが、先日委任を受けた抵当権移転登記についての抵当権者の委任状を確認すると、委任事項に登記識別情報を受領する権限の記載は無く、また、登記識別情報の通知を希望しない旨の記載もありませんでした。受任者が勝手に委任事項を追記することはできませんので、少し困りました。

調べてみますと、抵当権抹消登記の前提にする抵当権移転登記の場合、委任状に登記識別情報の通知を希望しない旨の記載が無くても、連件で抵当権抹消登記を申請するときは、その旨の授権は明らかであるので、委任状に登記識別情報の不通知に関する記載は不要という取り扱いが可能なようです。

ということで、抵当権移転登記では登記識別情報の通知を受けず、抵当権抹消登記では登記識別情報のみなし提供で処理してもらえました。

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2021-11-12 13:36  nice!(0) 
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個人の再生債務者の不動産任意売却の登記 [不動産登記]

個人の再生手続きが開始している案件で、個人の再生債務者が不動産を任意売却し、その所有権移転等の登記手続きをする場合における登記申請書の添付情報で少し悩みました。

再生債務者は、一般的には所有不動産の管理処分権限を失わないことから、再生債務者自身が登記申請人になります(管財人が選任されていないケース)。
この点、再生債務者が法人の場合は、再生債務者の会社登記事項証明書を取得することにより、再生手続きが開始されていること、監督委員が選任されていること、監督委員の同意を要する行為が分かります。

このため、会社が再生債務者である場合、通常は監督委員の同意書と監督委員の選任(印鑑)証明書を登記申請書の添付情報として提供し、登記官は会社登記事項とこれら添付情報を照らし合わせて審査をするものと思います。
ところが、再生債務者が個人である場合、会社と異なり、再生手続きが開始されていることはもちろん、監督委員の選任の有無、監督委員の同意を要する行為などを公示する場所がありません。

ところで、破産債務者の場合ですが、最近は不動産登記記録から破産手続きが開始されていることは分かりませんが、破産債務者は所有不動産の管理処分権限を失っていますので、裁判所の許可書、破産管財人の選任(印鑑)証明書などを提供し、破産管財人から登記申請をしています。
これと同じように、個人の再生債務者の場合も、不動産登記記録からは再生手続きが開始されていることは分かりませんが、監督委員の同意書と監督委員の選任(印鑑)証明書を提供し、再生債務者から登記申請をすることも考えられます。

しかしながら、登記官の立場で考えますと、再生債務者が所有不動産の管理処分権限を失っているのかいないのかは不明(管財人の選任の有無が不明)ですし、どのような行為が監督委員の同意事項になっているかも分かりませんので、ただ監督委員の同意書等を提供されたとしても、それだけで適式に審査することが難しいのではないかと考えました。

このため、今回は、所有不動産の担保権の受け戻しと処分が監督委員の同意事項であることを再生債務者の代理人に確認し、そのうえで監督委員の同意書と監督委員の選任(印鑑)証明書の原本の提供を受け、登記申請書の添付情報としてはこれら同意書等は提供せずに登記申請をしました。

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2021-10-22 18:00  nice!(0) 
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法定相続登記後の遺産分割による移転登記 [不動産登記]

いわゆる法定相続登記がなされた後に遺産分割協議が整った場合、遺産分割を原因として持分移転登記を申請することになると思います。

ところで、法定相続人間の遺産分割協議が成立する前に、法定相続人の一人が死亡したとしても、他の法定相続人と死亡した法定相続人の権利義務承継者により遺産分割協議をすることが可能です。

今回、法定相続登記がなされ、そのうちの一人が死亡し、さらにその後に遺産分割協議が成立したのですが、どのような手順で登記申請をすべきか、少し悩みました。

悩んだのは、死亡した法定相続人について法定相続登記をすることなく、遺産分割を原因として持分移転登記申請をするのか、死亡した法定相続人について法定相続登記をしたうえ、遺産分割を原因として持分移転登記を申請するのかという点です。

やはり死亡した法定相続人について法定相続登記を経由すると、部分的に実態と異なる公示となるのではないかと考え、死亡した法定相続人についての法定相続登記は申請せず、遺産分割を原因とする持分移転登記を申請しました(死亡した法定相続人はその権利義務承継者による申請)。

特に問題なく登記が完了しましたので、この方法で良かったようです。

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2021-10-15 18:00  nice!(0) 
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種類株式を発行している会社の吸収合併 [会社登記]

吸収合併の存続会社が種類株式を発行している場合、合併契約承認の株主総会のほかに、種類株主総会の開催も必要になります。
例えば、A種優先株式を発行している場合は、通常の株主総会に加え、普通株主による種類株主総会とA種優先株主による種類株主総会を開催することになります。
A種優先株主に議決権がない場合であっても、この種類株主総会の開催は必要です(会社法第322条第1項)。

ところで、通常の場合、株主総会と普通株主による種類株主総会は同時に開催されることが多いようです(大きな会社とのかかわりが無いので実情は不明です)。
ただ、登記所的には、決議を兼ねることは認めてくれないようですので、議事録は別々に作成した方が良さそうです。

今回は、株主が一人の会社でしたので、株主総会、普通株主による種類株主総会、A種優先株主による種類株主総会をささっと開催していただき、議事録も3通(合併消滅会社の分を入れると4通)作成しております。株主リストは、合併存続会社代表者作成にかかるものを4通作成しております。

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2021-03-11 17:01  nice!(0) 
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設立時役員の選任時期 [会社登記]

株式会社の発起設立で設立時取締役や設立時代表取締役を選任する場合、実務上では定款で定めることが多いのではないかと思います。もちろん、定款で定めず発起人の合意で選任することもあるかと思います。

ところで、定款で定めずに発起人が設立時取締役等を選任する場合、これを選任するタイミングが問題になります。
会社法第38条第1項は、発起人は出資の履行が完了した後、遅滞なく設立時取締役を選任しなければならないと規定しています。また、同条第4項は、定款で設立時取締役を定めた場合、出資の履行が完了したときに選任したとみなす旨を規定しています。

これら規定から、出資の履行が完了する前に発起人が全員の一致で設立時取締役等を選任した場合、この選任行為は無効となってしまうのか、定款に定めた場合の規定は類推適用されないのか、色々と考える機会がありました。

が、結局、登記の手続きですので、色々申請人側が考えたとしても、登記所が登記申請を受理するかしないかに帰結してしまいます。この論点は、定款で規定しない設立時取締役等は、発起人の出資履行後に選任するのでなければ、登記申請は受理されないということのようです。

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2020-11-30 18:00  nice!(0) 

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